「双子の家」 顛末記 狭小敷地の建て替え住宅 愛着あるところに暮らすために

M4 HOUSE と Y HOUSE

 まず、「双子の家」誕生にまつわるお話を少し…。

 自邸であるM4 HOUSEは両親との同居を期に誕生します。
建て売り住宅地の一画で、狭小敷地での建て替えでした。
「小さな家でも、くつろげる大きな空間をつくりたい」との思いを持って設計しました。
空間は無駄なく、各々個室はコンパクトに納めることで大空間を実現させました。
内部は、コンクリート打ち放し、造り付け家具・建具はシナ合板グレイシュ塗装で
コンクリートとの統一感を大切にしました。

 そして、完成後のある日、建て替えを思案中のY HOUSEの
オーナーとなる御夫婦が訪ねて来られました。
3階のリビングに座られて「いいなー。我が家もこれできるかな」
こうして、「双子」が誕生する事となったのでした。

 Y HOUSEの敷地は、M4と同じく、建て売り住宅地の中にあり、
三方は肩を並べるように接近して建つ2階建て住宅に囲まれていました。
その地域も建て替えが進み、既に3階建となった住宅も相当数みうけられ、
将来は、3階建てが建ち並ぶ街並みが想像できました。
ただ、東側の前面道路を挟んで生産緑地の田んぼ、奥には稲荷神社があり、
その常緑の大きな杜を目前に望めることができました。
そして、この緑が幾度か考えた引越しを思いとどまらせていた事を知り、
愛着のある風景と共にすごせる家を創るため、
いわゆる「狭小敷地での建て替え」の計画を開始する事になりました。
数々の条件をクリヤーしつつ夢の実現に向けて、設計と打ち合わせを繰り返す事数ヶ月。
工事は始まり、現場も佳境を迎え8ヶ月後、Y HOUSEはようやく完成するのでした。

くつろげる空間をつくる

 「小さな家でも、くつろげる大きな空間をつくりたい」という思いを、
この家ではリビングダイニングで実現しようと考えました。
空間と個室についての考え方はM4と同じで、
具体策として、階段上部を空間の一部に取り込んで、12.5帖の広がりを得ました。
また、リビングダイニングを最上階に設けて、屋根裏空間も利用して
天井の高さを、最高4.25mまでGETする事が出来ました。

 内部の仕上げは、壁・天井共シナ合板の生地を生かしたウレタン塗装とし、
また造り付け家具も同材・同塗装を使用することによって、
ナチュラルでかつシンプルな住まいを創りたいと思いました。

 完成後、お嬢さんが勉強を自室ではなくこのリビングでされていることを聞いて、 家族の集いにこの空間が「少しは役立っているのかなあ」と思ってはこっそり微笑んでいます。
蛇足ながらM4 HOUSEでの我が妻も、家事と余暇のほとんどをリビングにてこなし、
「何だか、ここがいいのよ」といたってご機嫌の様子です…。

 2軒の家は、仕上げも規模も住人も違っています。
しかし、住み手の希望も家についての考え方も同じ、それを実現したのも同じ、
そして何より家族が集える家としての存在も同じならば
「双子の家」と銘々したいのです。

            日本建築家協会近畿支部発刊 「私が選ぶ2001建築家カタログ」より再録

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